「FXで利益が発生したけれど税金を納める必要はあるの?納めないとばれるのか気になる」
「FXで得た利益の税金を払うのが面倒。払わなくてもばれない?」
FXで得た利益は「雑所得」に該当するため、一定以上の利益を得ると納税の義務が発生します。とは言え、わざわざ確定申告をして税金を納めることは面倒だと感じている方もいるのではないでしょうか。
結論から言うと、FXの税金は税務署に絶対にばれます。それは、下記の4つの理由があるからです。
- ①FX業者は税務署に支払調書を提出する義務がある
- ②FXでの入出金の履歴が残る
- ③【海外FXの場合】国外送金等調書を税務署長に提出する義務がある
- ④【海外FXの場合】CRS制度のお金の動きを監視している
FX業者は税務署にFXでの損益データを提出しています。また、FXの税金を納めていない疑いがあると税務署は通帳の入出金情報や取引データを閲覧できるので、税金を納めていないことはすぐに分かります。
FXの税金は必ず納めなければならないものですが、少しでも税額を抑えるには下記の3つのポイントを知っておくことがおすすめです。
- ①FXに関連する必要経費をできるだけ計上する
- ②損益通算で他の損益と相殺する
- ③利益が出ていない年度でも確定申告をしておく
そこでこの記事では、FXで稼いだ利益にかかる税金が必ずばれる理由や少しでも税金を抑える方法などをまとめて解説していきます。とくに、税金の支払いが必要かどうかすぐに判断できるフローチャートもあるため必見です。
- ◎FXで稼いだ利益にかかる税金が必ずばれる4つの理由
- ◎FXの税金未納がばれると税務調査の対象となる可能性がある
- ◎FXで税金を支払うために確定申告が必要なケース
- ◎FXの利益にかかる税金の算出方法
- ◎FXで支払う税金を少しでも抑える3つのポイント
この記事を最後まで読めば、FXの税金を正しく納税できるようになります。FXの税金は適切に処理をしないとリスクが高いため、ぜひ正しい方法を理解しておきましょう。
目次
1.FXで稼いだ利益にかかる税金が必ずばれる!4つの理由
FXで得た収益は一般的には「雑所得」に該当します。会社やアルバイトでの給与と同様でFXでも一定の所得を得ると、税金を納めなければなりません。
とは言え、せっかくFXで稼いだ利益から税金を払いたくないと考えている人もいるでしょう。しかし、FXで稼いだ利益にかかる税金は下記の4つの理由で絶対にばれます。
- ①FX業者は税務署に支払調書を提出する義務がある
- ②FXでの入出金の履歴が残る
- ③【海外FXの場合】国外送金等調書を税務署長に提出する義務がある
- ④【海外FXの場合】CRS制度のお金の動きを監視している
なぜ、FXで稼いだ利益はばれてしまうのか1つずつ詳しく解説していきます。
1-1.FX業者は税務署に支払調書を提出する義務がある
FX業者には、税務署に支払調書を提出する義務があります。支払調書とは、FXで誰がいくらの損益を得たのか税務署に提出する書類のことです。支払調書の提出は所得税法で定められており、FX業者は必ず行わなければなりません。
実際にFX業者の公式サイトでは、下記のように支払調書を提出していることを明記しています。
当社では、2009年1月5日受渡し以降のFX取引におけるお客様の取引損益、スワップ損益を「支払調書」に記載の税務署へ提出します。お客様には当社にお届出いただいているお名前・ご住所を「支払調書」提出時のお名前・ご住所として告知いただく必要があります。 |
出典:GMOクリック証券「FX取引の支払調書は税務署に提出されますか?」
お客さまの外国為替証拠金取引について差金等決済を行った場合には、お客さまの住所、氏名、支払金額などを記載した支払調書を所轄税務署長に提出します。 |
出典:ソニー銀行「【外為証拠金取引(FX)】 支払調書は税務署に提出されますか?」
支払調書には原則として、氏名や取引内容を含む下記のような情報が記載されます。
【支払調書の主な記入項目】
- 氏名
- 住所
- マイナンバー
- 取引内容(決済方法や決済年月日)
- 決済損益
税務署では支払調書を始めさまざまな書類をもとに適切な申告、納税をしているのか確認しています。FX業者の支払調書では収益が発生しているのにも関わらず、適切な申告ができていないと税金が支払われていないことが分かってしまうのです。
「FXで利益があったけれど隠しておこう」と思っても、FX業者経由で税務署には取引損益が報告されています。
1-2.FXでの入出金の履歴が残る
税務署は税務調査をする場合、本人の同意なく預貯金の流れを確認できます。多くの金融機関では口座の取引履歴を10年分保存しているため、FXの利益の入出金を簡単に確認することが可能です。
・いつごろFX口座に入金があったのか
・いくらぐらいの入金があったのか
・FXの収益を他の口座に移行しているか
など、FXで得た利益の流れは確認できるようになっています。また、税務署ではクレジットカード決済やパソコンデータなども調査できるため、銀行口座以外の取引もすぐに分かります。このように、FXの利益を隠そうとしても税務調査の対象となった場合には、税金が支払われていないことがばれてしまいます。
1-3.【海外FXの場合】国外送金等調書を税務署長に提出する義務がある
海外FXでは収益が発生したときに、国内の銀行に送金する方法があります。100万円を超える国外送金をする場合、金融機関には「内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律」により国外送金等調書の提出が義務付けられています。
【国外送金等調書の提出が義務化されているケース】
- 入金目的で100万円を超える海外送金をする
- 出金目的で100万円を超える海外送金をする
例えば、海外FXで200万円の収益を得たとします。そのうち150万円を日本の銀行に海外送金して出金する場合に、金融機関は国外送金等調書を作成して税務署長に提出しなければなりません。
国外送金等調書には原則として、氏名や送金額を含む下記のような取引情報が記載されます。
出典:国税庁「国外送金等調書」
【国外送金等調書の主な記入項目】
- 氏名
- 住所
- 送金額
- 口座番号
- 取り次ぎをした金融機関
- 送金目的など
国外送金等調書があると、税務署は国外送金をした事実が把握できます。納税がされていない送金は簡単に分かるため、税金の未納がばれてしまいます。
1-4.【海外FXの場合】CRS制度のお金の動きを監視している
海外FXではCRS(Common Reporting Standard)制度を使い、脱税が起きないように監視しています。CRS制度とは、経済協力開発機構が策定した国際間で金融口座情報を自動交換する制度です。国外の金融機関を利用した脱税を回避目的で策定されました。
CRS制度には日本を含む100カ国以上が参加しており、参加国間では非居住者の口座情報を共有できます。
【参加国の一例】
- タイ
- マレーシア
- 中国
- シンガポール
- フランス
- ブラジルなど
例えば、海外FXで得た収益を日本の銀行に送金しないで海外の口座に保有していたとしましょう。CRS制度に参加国している国であれば税務当局間で口座情報が共有されているため、日本に送金しなくても海外FXで収益をあげていることが分かってしまうのです。
参考:国税庁「共通報告基準(CRS)に基づく自動的情報交換に関する情報」
ここまで解説したようにFXの取引情報はさまざまな視点から税務署に共有されているので、税金の支払いから逃れることはできません。
2.【損失事例あり】FXの税金未納がばれると税務調査の対象となる可能性がある
FXで稼いだ収益を適切に申告せず税金未納の状態になると、税務署への呼び出しもしくは税務調査の対象になると考えられます。
税務署への呼び出し | 確定申告の内容に疑問や不備がある場合に実施される |
---|---|
税務調査 | 確定申告の内容が正しいのか税務署が詳しく調査する調査官の質問に回答したり通帳、取引データなどの提出をしたりする必要がある |
「1.FXで稼いだ利益にかかる税金が必ずばれる4つの理由」でも述べたように、税務署はさまざまな手段を使いFX取引の情報を収集しています。例えば、税務署側にAさんのFX取引履歴があるのにも関わらずAさんの確定申告にはFXの利益が記載されていない場合は税金未納の可能性があると判断し、税務調査を行う可能性があります。
税務調査でFXに関する利益が発覚した場合は、本来の納税額との差額を支払わなければなりません。それだけでなく、延滞税や過少申告加算税(本来納めるべき税金より少なかったときに課せられる税金)なども課せられると、支払うべき税額がどんどん増えていきます。
税務調査で課せられる可能性がある税金
延滞税 | 税金の法定納付期限までに納税がなかった場合に課税 |
---|---|
無申告加算税 | 本来納めるべき税金より少なかったときに課税(一定の条件に該当しない場合のみ) |
無申告加算税 | 確定申告を忘れていたときに課税 |
重加算税 | 支払うべき税金の隠ぺいや悪質な過少申告の場合に課税未納分の税金の35~40%が課税される(一定の条件に該当しない場合のみ) |
このように、FXで得た利益にかかる税金は隠そうとしても隠しきれません。それだけでなく、税務調査の対象となると、不足していた税金に加えて支払う税額が増える可能性があります。
【FXでの多額利益を隠したとして告発されたケースもある】
実際にFXで得た利益を隠していた投資関連会社が、法人税法違反の疑いで東京地検に告発された事例があります。この会社では自己資金を元手にFX取引で多額の利益を得ましたが、売り上げの一部を除外し脱税していたそうです。
FXの収益はばれないから税金を払う必要はないと考えるのは、とても危険です。あらかじめ申告が必要なケースを理解して、漏れなく確定申告を行うようにしましょう。
参考:読売新聞「FXで多額利益、1.7億円の所得隠しマンション購入か…国税が告発」
3.FXで税金を支払うために確定申告が必要なケース
FXで税金を支払うために確定申告が必要なケース | |
---|---|
会社員 | FXのみで年間20万円を超える所得がある |
個人事業主・扶養内 | 年間48万円を超える所得がある |
冒頭でも述べたようにFXで得た利益は一般的には雑所得に該当するため、年間で一定の収益を得ると所得税などの課税対象になります。課税対象となった場合は確定申告をする義務が発生するため、確定申告をしないと税務署への呼び出しもしくは税務調査の対象となるので注意が必要です。
FXの収益が課税対象となる基準は、会社員と主婦・個人事業主により異なります。上記のフローチャートを参考にしながら、確定申告が必要なケースに該当するかチェックしてみましょう。
3-1.会社員の場合:FXのみで年間20万円を超える所得がある
会社員の場合は、FXのみで年間20万円を超える所得があると確定申告の対象になります。
【確定申告が必要な方】 給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く。)の合計額が20万円を超える |
例えば、毎月の給与とは別に毎月少しずつFXで収益を得たとします。下記のケースでは年間の収益の合計が25万円なので、FXの収益は所得税の対象です。
2022年にFXで得た収益 | |
---|---|
1月 | 5万円 |
4月 | 2万円 |
6月 | 4万円 |
9月 | 10万円 |
11月 | 4万円 |
合計 | 25万円=確定申告が必要 |
FXのみで年間20万円を超える所得がある場合は翌年の定められた期間までに確定申告を行い、税金を納税します。
【注意するポイント】 FX以外にも副業をしている場合は、副業で得た所得も含めて年間20万円を超えると確定申告が必要です。例えば、FXで年間15万円の所得があり、他の副業で年間10万円の所得がある場合は、合算すると雑所得が25万円です。この場合も、確定申告をして所得税を納税する必要があります。 |
3-2.個人事業主・扶養:年間48万円を超える所得がある
個人事業主と扶養内の場合は、年間48万円を超える所得があると確定申告の対象となります。
①個人事業主の場合
個人事業主の場合は、基礎控除額(誰にでも反映される一律の控除額)が48万円です。48万円以下だと控除内なので所得税は発生しませんが、48万円を超えた部分は所得となるため税金が発生します。
個人事業主のFXにかかる税金で注意するべきポイントは、「年間48万円」は事業や他の収益と合算した額である点です。例えば、FXでの収益は5万円であっても、事業で45万円の収益が出ていれば確定申告が必要です。
個人事業主の場合 | |
FXでの1月~12月の収益 | 5万円 |
事業①での1月~12月の収益 | 30万円 |
事業②での1月~12月の収益 | 15万円 |
合計 | 50万円=確定申告が必要 |
②扶養内の場合
学生や主婦など家族の扶養に入っている場合は、年間所得が48万円を超える(給与のみの場合は年間103万円)と配偶者控除が受けられません(配偶者特別控除など他の控除は受けられる可能性があります)。
扶養から外れると個別で確定申告を行い、税金の申告を行う必要があります。例えば、専業主婦がFXを始めて年間50万円の収益を得た場合は、確定申告をしなければなりません。
専業主婦の場合 | |
---|---|
1月 | 3万円 |
4月 | 10万円 |
5月 | 17万円 |
8月 | 10万円 |
11月 | 10万円 |
合計 | 50万円=確定申告が必要 |
4.FXの利益にかかる税金の算出方法
FXで一定の収益を得ている場合は、実際にどれくらいの税金を納める必要があるのか理解しておく必要があります。そこでここでは、FXの税金を算出する方法を手順を追って解説しています。
FXの税金の算出方法 | ||
---|---|---|
①FXの利益の算出方法 | 為替差益+スワップポイント-必要経費 | |
②FXの利益にかかる税金の算出方法 | 国内FXの場合 | FXの所得×20.315% |
海外FXの場合 | FXの所得を含む全所得の5~45% |
税額によってはあらかじめ用意しておかないと納税時に負担になることも考えられるので、納税の目安を把握しておきましょう。
4-1.FXの利益の算出方法
まずは、FXの利益を算出してみましょう。FXの利益は、下記の方法で算出できます。
為替差益 | 為替レートの変動により得られる損益 |
スワップポイント | 2カ国間の金利差によって生まれる損益 |
必要経費 | 取引手数料や通信費などのFX取引に必要な経費 |
為替差益とは、為替レートの変動で得られる損益のことです。例えば、米ドルの為替レートが90円のときに購入して110円になったタイミングで売ると、1通貨当たり20円の収益が発生します。この部分が為替差益に該当します。
スワップポイントとは、2カ国間の金利差によって生まれる損益です。例えば、日本円の金利が1%で米ドルの金利が6%の場合、米ドル/円の通貨ペアで買いの建玉するとしましょう。
投資家は米ドル金利6%を受け取り円金利1%を支払うため、差額の5%に相当する金額をスワップポイントとして得られます。
為替差益とスワップポイントの合計が収益となり、ここから引けるのがFXにかかる経費です(経費については「5-1.FXに関連する必要経費をできるだけ計上する」で詳しく解説しています)。
必要経費には、下記のようなものが経費に含まれます。
- FX取引に必要な通信費
- FXの勉強のための研修費
- FXの取引に必要な手数料など
例えば、1年間の必要経費として10万円が発生した場合は、為替差益とスワップポイントの合計から10万円を引いた額がFXの利益となります。
4-2.FXの利益にかかる税金の算出方法
FXの利益にかかる税金の算出方法は、国内FXと海外FXで大きく異なります。
FXの利益にかかる税金の算出方法 | |
---|---|
国内FXの場合 | FXの所得×20.315% |
海外FXの場合 | FXの所得を含む全所得の5~45% |
国内FXと海外FXに分けて算出方法をご紹介します。
①国内FXの場合
FXの税金は申告分離課税に該当し、他の所得とは区別して算出します。
差金決済による差益が生じた場合 他の所得と区分し、「先物取引に係る雑所得等」として、所得税15パーセント(他に地方税5パーセント)の税率で課税されます(申告分離課税)。 |
ただし、2037年末までは復興特別所得税が上乗せされるため「所得税15.315%」+「住民税5%」=20.315%が税額になります。例えば、FXで10,000円の利益が出た場合は、10,000円×20.315%=約2,032円で2,032円の税金が発生します。
②海外FXの場合
海外FXは国内FXとは異なり、累進課税が適用されます。累進課税は所得に応じて、税率が7段階に分かれています。
課税対象の所得額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000円 から 1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
出典:国税庁「所得税の税率」
ここで注意しなければならないのは、累進課税は他の所得と合算した額に対して課税される点です。例えば、海外FXで200万円の利益が、他の収益で300万円の利益がある場合は、500万円が課税対象となります。500万円の税率は20%なので、100万円が所得税となります(控除額を除く)。
また、国内FXとは異なり、累進課税とは別に10%と住民税と2.1%の復興特別所得税がかかります。
4-3.税金を算出するシミュレーション
ここでは、FXで損益が出た場合に、いくら税金がかかるのかシミュレーションしてみましょう。
シミュレーション①会社員の場合(国内FX)
為替差益 | 40万円 |
スワップポイント | 5万円 |
必要経費 | 4万円 |
まずは、FXで得た利益を算出します。為替差益:40万円+スワップポイント:5万円-必要経費:4万円だと、年間利益が41万円です。会社員は年間20万円を超えると確定申告の対象となるため、税金が発生します。FXで得た利益41万円にかかる税金は、41万円×20.315%=約83,292円です。
シミュレーション①専業主婦の場合(海外FX)
為替差益 | 100万円 |
スワップポイント | 20万円 |
必要経費 | 10万円 |
まずは、海外FXで得た利益を算出します。為替差益:100万円+スワップポイント:20万円-必要経費:10万円だと、年間利益が110万円です。専業主婦は所得が年間48万円を超えると確定申告の対象となるため、税金が発生します。
海外FXで得た利益110万円にかかる税金は、110万円×5%=55,000円です(別途住民税・復興特別所得税が必要)。このように、FXにかかる税金の目安は簡単に算出できるため、参考にしてみるといいでしょう。
5.FXで納める税金を少しでも抑える3つのポイント
FXは利益に応じて、適切な税金を納めなければなりません。しかし、少し工夫をすれば納める税金を抑えることができます。ここではFXで納める税金を少しでも抑えるポイントを紹介するので、チェックしてみてください。
- ①FXに関連する必要経費をできるだけ計上する
- ②損益通算で他の損益と相殺する
- ③利益が出ていない年度でも確定申告をしておく
5-1.FXに関連する必要経費をできるだけ計上する
1つ目は、FXに関連する必要経費をできるだけ計上することです。「4-1.FXの利益の算出方法」でも触れたように、必要経費はFXで得た収益から引くことができます。必要経費を逃さず計上できれば、その分利益を抑えられます。
例えば、国内FXでの収益が200万円あった場合、必要経費により下記のように税金に差が生まれます。必要経費は10万円と50万円では税金に8万円以上の差が出るため、FXに関する経費は把握しておくことが大切です。
FXの収益 | 必要経費 | 支払うべき税金 |
---|---|---|
200万円 | 10万円 | 385,985円 |
200万円 | 30万円 | 345,355円 |
200万円 | 50万円 | 304,725円 |
FXの必要経費の一例としては、インターネット接続料やFXの手数料などがあります。
【FXの必要経費の一例】
- FX取引で使用するインターネット接続料やスマートフォンの料金
- FX取引の手数料
- FX取引に使用するソフトやアプリの料金
- FXに関する書籍やセミナー代
- FX取引のために購入したパソコンやスマートフォン
必要経費として計上するには領収書やレシートなどの証拠が必要なので、忘れずに保管するようにしましょう。
5-2.損益通算で他の損益と相殺する
2つ目は、損益通算で他の利益と相殺することです。損益通算とは、同期間内での雑所得で生じた損益と相殺して所得を抑えることです。国内FXではあれば他の先物取引に係る雑所得と、海外FXでは雑所得との相殺が可能です。
国内FX | 海外FX | |
---|---|---|
損益通算できる区分 | 先物取引に係る雑所得等 | 雑所得 |
例 | 他の国内FX業者での損益 先物・オプション取引 |
他の海外FX業者での損益 暗号通貨取引での損益 |
例えば、A会社で国内FXをしており2022年1月~12月までに300万円の利益があったとします。同期間でB会社の国内FXと先物・オプション取引で各100万円ずつの損失を出しました。
損益通算の例 | |
---|---|
A会社の国内FXの利益 | 300万円 |
B会社の国内FXの損失 | -100万円 |
先物・オプション取引の損失 | -100万円 |
損益通算すると | 利益:100万円 |
損益通算をすると、200万円分の損失を相殺できるため利益は100万円となります。損益通算をするには確定申告での処理が必要なので、損益通算ができる損益がある場合は活用してみてください。
【国内FXと海外FXとの損益通算はできない】 国内FXと海外FXの双方をしている場合は、国内FXと海外FXでの損益通算はできません。どちらも雑所得ではありますが、雑所得の中での区分が異なります。国内FXは「先物取引に係る雑所得等」ですが、海外FXは「雑所得」です。同じ区分内でしか損益通算はできないため注意しましょう。 |
5-3.利益が出ていない年度でも確定申告をしておく
3つ目は、国内FXの場合は利益が出ていない年度でも確定申告を行うことです。国内FXの場合は「損失の繰越控除」ができます。損失の繰越控除とは、一定の条件を満たして確定申告を行えば損失を3年間繰り越せる仕組みです。
例えば、国内FXを始めた初年度は-100万円の損失を出したとします。翌年に国内FXで200万円の利益が出た場合、損失の繰越控除をしておけば、昨年の損失分と相殺ができます。
損失の繰越控除の例 | |
---|---|
2021年1月~2021年12月の国内FXの利益 | -100万円 |
2022年1月~2022年12月の国内FXの利益 | +200万円 |
2022年度の確定申告で利益と相殺すると | 100万円の利益として計上 |
損失の繰越控除は利益が出ていない場合でも、確定申告で損失を計上しておかないと活用できません。また、海外FXでは損失の繰越控除は活用できないため、注意してください。
6.FXの税金に関するよくある質問
最後に、FXの税金に関するよくある質問をまとめました。
6-1.FXの税金に抜け道はありますか?
FXの税金に抜け道はありません。「1.FXで稼いだ利益にかかる税金が必ずばれる4つの理由」で述べたように、FXで稼いだ収益はさまざまな方面から情報収集されています。税務署にも情報が共有されているので、抜け道はありません。また、故意に税金を支払わないと脱税行為となり、所得税法などにより厳しく罰せられる可能性があります。
6-2.会社員のFX収益が20万円以下の場合、住民税はどうなりますか?
FXの収益が20万円以下の場合、確定申告は不要でも住民税の申告は必要です。「20万円以下は申告が不要」というのはあくまでも確定申告でのルールで、住民税には適用されません。住まいの市区町村の手続き方法に従って、期限内に申告するようにしてください。
7.まとめ
いかがでしたか?FXで利益が出た場合に、適切な申告をしなければならないことが分かったと思います。最後にこの記事の内容を簡単にまとめてみましょう。
◎FXで稼いだ利益にかかる税金は必ず税務署にばれる理由は次の4つ
- ①FX業者は税務署に支払調書を提出する義務がある
- ②FXでの入出金の履歴が残る
- ③海外FXでは国外送金等調書を税務署長に提出する義務がある
- ④海外FXではCRS制度のお金の動きを監視している
◎FXの税金を納めていない場合は税務調査の対象となる。場合によっては追加で税金を納税しなければならない
◎FXの利益に確定申告が必要となる場合は下記のとおり
- 会社員:FXのみで年間20万円を超える所得がある(他の副業と合わせて20万円を超える所得がある)個人事業主・扶養内:年間48万円を超える所得がある
※例外あり
◎FXの利益にかかる税金の算出方法は下記のとおり
FXの利益の算出方法 | 為替差益+スワップポイント-必要経費 | |
FXの利益にかかる税金の算出方法 | 国内FXの場合 | FXの所得×20.315% |
海外FXの場合 | FXの所得を含む全所得の5~45% |
◎FXで納める税金を少しでも抑えるポイントは次の3つ
- ①FXに関連する必要経費をできるだけ計上する
- ②損益通算で他の損益と相殺する
- ③利益が出ていない年度でも確定申告をしておく(国内FXのみ)
FXで稼いだ利益にかかる税金は、必ず税務署にばれます。隠そうとすると余計に納税額が膨らむリスクもあるため、適切な算出方法を理解して期限内に申告するようにしましょう。