「雑誌に公務員の副業特集があったけれど、みなし公務員は副業してもいいの?」
「もし、内緒でみなし公務員が副業をしてバレたらどうなるの?」と思ったことはありませんか。
そもそもみなし公務員とは、以下のような仕事をしている人を指します。
- 日本銀行の職員
- 日本郵便の郵便認証司
- 国立大学法人の職員
- 日本年金機構の職員
- 国民年金基金連合会の職員
- 駐車監視員
- 都道府県公安委員会指定自動車教習所の技能検定員
もともとは国営で現在は民間となっているものや、省庁が管轄している法人で働く人が該当するケースが多いです。
みなし公務員には、以下の副業が認められています。
- 農業や林業、水産業を営む家業の手伝い
- 不動産投資
- 株やFX、投資信託
- 執筆活動
しかし、職場や職種によっては、上記の副業であっても禁止されている場合があるため、職場に確認することが大切です。
また、副業が認められた場合には、以下の注意点を守って行うことが重要です。
- 事前に必ず職場に確認する
- 規定を守って副業を行う
- 年間20万円以上の利益が出たら確定申告を行う
本記事では、以下についてお伝えしていきます。
- みなし公務員に認められている副業4つ
- 内緒の副業は住民税の請求額でバレる可能性がある
- 認められていない副業がバレた場合の処分
- みなし公務員が副業で注意すべき3つのポイント
この記事を参考にして、みなし公務員の副業について、気になる点を解消していってください。
目次
1. みなし公務員の副業規定は職場や職種によって異なる
みなし公務員は、職場や職種によって副業が認められている場合とそうではない場合があります。
現在勤務中の職場の上司や担当部署に、副業規定について確認をするのがもっとも確実ですが、以下で副業が禁止されている会社や職種の例をご紹介します。
◎副業が禁止の会社や職種例
- 日本銀行の社員
- 郵便認証司(内容証明などを取り扱う国家資格を持つ、日本郵便の社員)
- 日本年金機構の職員
- 国民年金基金連合会の職員
- 国立大学の職員
※副業が認められている企業であっても、役員クラスの社員や職員は禁止されているケースが多い
ただし、副業が認められている場合でも、みなし公務員としての責務を超えない範囲での副業でなくてはなりません。そのため、副業で得る収入にも制限があり、営利目的の副業は認められていません。
2. みなし公務員に認められている副業4つ
みなし公務員には、以下の副業が認められています。
- 農業や林業、水産業を営む家業の手伝い
- 不動産投資
- 株やFX、投資信託
- 執筆活動
以下で、ひとつずつ解説していきます。
2-1. 農業や林業、水産業を営む家業の手伝い
実家などが農林水産業を営んでいて手伝いをする場合は、副業として認められます。ただし、営利目的であってはならないため、無報酬であることが条件です。
家業の手伝いではなく、個人の趣味の範囲で農作物を育てたりすることは問題ありません。しかし、農園が大きくなり事業目的と判断されるほどの規模になったり、収穫した作物を販売して利益を上げたりした場合は規定違反となります。
2-2. 不動産投資
みなし公務員であっても、以下の規定を守れば不動産投資が可能です。
- 一戸建てであれば5棟未満
- マンションやアパートであれば10室未満
- 年間の家賃収入が500万円未満
- 不動産の管理を第三者(管理会社など)にゆだねる
人事院の規則で、独立家屋(一戸建て)の賃貸は5棟以上、独立家屋以外の建物(マンションやアパート)の賃貸は、独立区画の数が10室以上の場合を事業規模とみなすとしています。
つまり、一戸建てであれば4棟まで、マンションやアパートであれば9室までであれば不動産投資が可能です。
そのほかの注意点としては、みなし公務員としての職務に専念するため、家賃の集金や入居者募集といった管理業務については、管理会社などの第三者に委託する必要があります。
2-3. 株やFX、投資信託
株やFX、投資信託は一般的に資産を増やす目的で行われるため、みなし公務員であっても問題なく行うことができます。ただし、投資内容が仕事に関連する場合は禁止される場合があるため、とくに金融系の職種の場合は、事前に職場に確認するなど注意しましょう。
また、公序良俗に反するものに投資することも禁止されています。もちろん、インサイダー情報を用いて取引をするのは犯罪です。インサイダー取引で得た財産は没収され、そのほかに罰金刑や懲役刑が科されるため注意してください。
2-4. 執筆活動
みなし公務員は、公務員と同様以下の規定を守れば執筆活動が認められています。
- 営利目的ではない
- 執筆内容が信用失墜に繋がったり、守秘義務に抵触しない
- 本業に支障をきたさない
趣味の範囲で執筆して、コンクールなどに応募することは基本的には問題ありません。しかし、執筆したものをオークションなどで販売して利益を得ると、営利目的とみなされて規定違反となります。
そのため、同じ執筆活動でも、クライアントから報酬を得るライター業は営利目的とみなされる可能性が高いため、注意が必要です。
また、あくまでも執筆活動は兼業の範囲でなくてはならないため、執筆活動が忙しくなり本業に差し支えたり、みなし公務員としての収入を上回ったりした場合は副業とは認められなくなるでしょう。
かつては、公務員ですが「サラダ記念日」でベストセラー作家になった俵万智さんが、執筆活動が多忙になり2年後に勤務先の高校を退職した事例もありました。
3. 内緒の副業は住民税の請求額でバレる可能性がある
「副業のことを誰にも話していないのに、職場にバレてしまった!」
みなし公務員に認められている副業以外の活動をしていた場合、住民税の請求をキッカケに会社に副業がバレてしまう可能性があります。
副業で年間20万円以上の収入が発生した場合は、確定申告を行わなくてはなりません。その結果支払うことになる住民税の通知書は職場に届きますが、何も手続きをしなければ、副業で発生した分の住民税も上乗せされて届きます。
住民税は、みなし公務員として働いている分と副業の分が合わせて請求されるため、経理担当者が通知書を確認した結果、「AさんとBさんの給与が同じなのに、Aさんの住民税だけが高い」と気づいて発覚するケースがあるのです。
第三者に見つかってしまう可能性があるコンビニのような場所で副業をしたわけではなく、YouTubeでの広告収入や転売など、誰にもバレずに副業を行っていたとしても、確定申告をきっかけに副業がバレてしまう可能性があることを認識しておきましょう。
職場に副業をしていることが明るみにならないようにするためには、確定申告の書類を提出する際に、必ず「住民税は自分で納付する」の項目にチェックしてください。
詳しくは、国税庁の「手順6 住民税に関する事項を記入する」に説明がありますが、「自分で納付」を選ぶことで、職場から支払われる給与から住民税が差し引かれることはありません。つまり、職場の経理担当者に副業分の住民税額がバレることはないのです。
「自分で納付」を選んだ場合、住民税は指定の銀行口座から引き落とし、もしくはコンビニなどで支払うことになります。
4. 認められていない副業がバレた場合の処分とは
もし、みなし公務員として認められていない副業を行い、職場にそのことが明らかになってしまった場合、以下のような処分が科せられます。
みなし公務員の処分 | ||
---|---|---|
免職 | 懲戒免職となり、みなし公務員としての職を失う | 社内評価や給与などに影響あり |
停職 | 一定期間、職務に従事できない。停職期間中の給与は支払われない | |
減給 | 給与が一定額減らされる | |
戒告 | 戒めとして、文書または口頭で注意が行われる | |
厳重注意 | 注意が行われるが、その後の昇格や昇給に影響はない | 影響なし |
最悪の場合、免職処分になると解雇となり、仕事を失ってしまう可能性があります。
免職にならなかった場合でも、停職や減給、戒告と言った処分を受けた場合、会社内での評価が下がるため、その後の給与や社内での出世に影響を与えるといえるでしょう。
職場で認められていない副業を行うということは、上記のようなリスクが付きまとうことを覚えておいてください。
5. 総務省が副業を理由に2600人を超える郵便社員を処分
2020年4月、みなし公務員にあたる郵便社員が2600人以上、副業を理由に総務省から処分を受けました。
前述したように、内容証明など重要郵便物の処理を行う郵便認証司として働く社員は、みなし公務員とされています。そのうち2615人の社員が、以下のような副業を延べ2788件行っていたことが発覚しました。
- 不動産投資(168件)
- 消防団活動(1633件)
- 農業(364件)
- その他(623件)
これらは禁止された副業であり郵便法に違反する行為のため、総務省が違反した社員に対し、戒告や厳重注意の処分を行いました。日本郵便に対しても行政指導が入り、ニュースとしても取り上げられたのです。
6. みなし公務員が副業で注意すべき3つのポイント
みなし公務員が副業を行う場合、以下の3つの点に注意して行うことが大切です。
- 事前に必ず職場に確認する
- 規定を守って副業を行う
- 年間20万円以上の利益が出たら確定申告を行う
以下で、ひとつずつ解説していきます。
6-1. 事前に必ず職場に確認する
副業をしようと思ったら、始める前に必ず職場の上司や担当部署に確認を取りましょう。
みなし公務員は公務員とは異なりますが、職場によっては副業が禁止されています。また前述した日本郵便のように、同じ職場であっても郵便認証司は副業が禁止されているなど、職種によってルールが異なることもあります。
副業を始めてから「禁止だったとは知らなかった」で許されるものではありません。事前に副業が認められるかどうかを確かめるようにしてください。
6-2. 規定を守って副業を行う
副業の許可が下りたら、職場で定められているルールを守って行うようにしてください。
具体的な決まりについては直接上司や担当部署に確認する必要がありますが、一般的には以下のような行為が禁止されています。
- 勤務時間内に副業を行う
- 職場で知り得た情報を外部に漏らす
- 信用失墜行為(借金など)をしない
あくまでも、みなし公務員としての本業に支障のない範囲で行うのが副業です。そのほか、細かい規定が定められている場合もあるので、所属先に直接確認するようにしましょう。
6-3. 年間20万円以上の利益が出たら確定申告を行う
副業で年間20万円以上の利益が出たら、確定申告をしなくてはなりません。
みなし公務員として働いていると、確定申告をしたことがない人も多いかもしれませんが、申告書に必要事項を記入し、期日までに税務署に提出する必要があります。
副業がバレたら困るから、あるいはそれほど多くの利益が出ていないから無申告でも大丈夫だろうと考えてはいけません。納税は国民の義務でもあるため、無申告であることがバレてしまった場合、払うべき住民税や所得税に対し、無申告加算税や延滞税が課されることになります。
3章で解説したように、「住民税は自分で納付する」にチェックして申告することで、職場に副業がバレることはありません。
「年間20万円以上の利益が出たら確定申告を行う」と絶対に忘れないようにしてください。
7. まとめ
本記事では、みなし公務員の副業について解説してきました。
みなし公務員には、基本的に以下の副業が認められています。
- 農業や林業、水産業を営む家業の手伝い
- 不動産投資
- 株やFX、投資信託
- 執筆活動
しかし、日本銀行の職員や郵便認証司などは副業が禁止されています。
みなし公務員が副業を行う場合、以下の3つの点に注意して行うことが大切です。
- 事前に必ず職場に確認する
- 規定を守って副業を行う
- 年間20万円以上の利益が出たら確定申告を行う
また、副業分の確定申告で発生する住民税は、何も手続きをしなければ職場に通知されてしまいます。副業を会社に知られたくない場合は、確定申告の書類を提出する際に、必ず「住民税は自分で納付する」の項目にチェックしてください。