「FXのサヤ取りって何?」
「FXのサヤ取りって実際どうやるの?」
FXの投資方法を調べていて、このように思った方も多いのではないでしょうか。
サヤ取りとは、相場変動や時間差などによる売り値と買い値の開きを利用して、差益を得ることです。
特にFXや株式などの投資におけるサヤ取りは、裁定取引(アービトラージ)ともいい、同じ特性を持つ2つの商品間で、割安な方を買い割高な投資対象を売ることを指します。理論上リスクなしに差益を得られる手法です。
サヤ取りを禁止するFX会社もありますが、サヤ取り自体は特に違法ではありません。サヤ取りはローリスクローリターンの投資手法として実際にFX投資や株式投資で広く活用されています。
なおFXにおけるサヤ取り方法には下記2種類があります。
・為替差益のサヤ取り
・スワップポイントのサヤ取り
記事では上記2種類のサヤ取りの内容について紹介します。実際のやり方・手順についても解説しますのでぜひ参考にしてください。
▼この記事でわかること
- FXの2つのサヤ取りとは?
- FXの2つのサヤ取りの実際のやり方
- FXのサヤ取りにおすすめの通貨ペア
- FXのサヤ取りにおすすめのFX会社
- FXのサヤ取りで失敗しないための注意点
最後まで読むことで、FXのサヤ取りに向いている通貨ペアやFX会社を知ることもできます。またサヤ取りで失敗しないための注意点もわかります。
FXで上手にサヤ取りをして利益を上げるためにもぜひ最後まで目を通してみてください。
目次
1. FXのサヤ取りはローリスクローリターンの投資方法
冒頭でも触れましたが、FXのサヤ取りとは、同じ特性を持つ2つの商品間で、割安な方を買い割高な投資対象を売って差益を得ることです。
裁定取引(アービトラージ)ともいい、FXでのサヤ取りの方法には下記2つのタイプがあります。
- 為替差益におけるサヤ取り
- スワップポイントにおけるサヤ取り
以下で具体的な内容について紹介します。
1-1. 為替差益のサヤ取りとは
為替差益のサヤ取りは、相関関係にある2つの通貨ペアについて、売りと買いの逆のポジションを持つことにより、為替変動のリスクを避けながら、価格差から発生する差益を狙う取引方法のことです。
相関関係にある通貨ペアの価格が同じトレンドを描くことを利用し、両者の価格差が大きく開いた時点に着目し、両者の乖離が次第に収束すると見越してポジションを持ちます。そしてその後、ポジションが収束した時点で決済します。
相関関係にある通貨ペアとしてよく挙げられるのは、豪ドル/円とNZドル/円のため、この2つの通貨ペアで見てみましょう。
※図はTradingViewで作成
上記のように、相関性の高い豪ドル/円とNZドル/円の価格差が広くなったときに、価格の高い豪ドル/円を売りポジションで持ち、価格の低いNZドル/円を買いポジションで持ちます。
その後、相関性の高い通貨であれば、双方の価格が近づくことが予想されます。つまり、価格が高くなっている通貨はその後価格が下がり、価格が低い通貨はその後価格が上がると期待できます。
そして、実際に価格差が縮まったところで決済すると両ポジションで利益を得ることできます。これが、為替差益のサヤ取りの考え方です。
万が一、為替が急変動した場合でも、相関性のある通貨ペアで逆のポジションを持っているため、一方で損失を被っても、もう一方で収益が出るので大きなマイナスにはなりにくくなります。
メリットは理論上、大きなマイナスを避けられるというローリスクの手法であることです。ローリスクでFXを初めてみたい方におすすめといえるでしょう。ただし、実際に利益を上げることは比較的難しいといわれたり、両建てのため必要資金が通常の取引の2倍かかったりするデメリットもあることに注意しましょう。
1-2. スワップポイントのサヤ取りとは
スワップポイントのサヤ取りとは、同じ通貨ペアあるいは相関性の高い通貨ペアについて、2つのFX会社で売り買いの逆ポジションを持つことで、為替変動のリスクを避けてスワップポイントを受け取る方法です。
例えば、スワップポイントが比較的高いトルコリラ/円の通貨ペアについて、スワップポイントでサヤ取りをするケースを考えてみましょう。
なお、スワップポイントとは、通貨ペアの2ヶ国間の金利差によって発生する利益で、通貨ペアを売り買いのポジションで保有している限り、毎日得られるポイントです。
スワップポイントは通貨ペアごと、FX会社ごと、売り買いのポジションごとに、下記のように異なります。
【トルコリラのスワップポイントの例】
A社 | B社 | C社 | ||
---|---|---|---|---|
トルコリラ/円 | 買 | 20.0円 | 20円 | 23円 |
売 | -20.0円 | -35円 | -40円 |
※1万通貨当たり
例えば、A社でトルコリラ/円を買いのポジションで1万通貨保有していると、1日20円ずつ口座残高に加算されます。一方でA社でトルコリラ/円を売りのポジションで1万通貨保有していると1日20円ずつ差し引かれます。(実際のスワップポイントは日々変動します)
スワップポイントのサヤ取りでは、できるだけ高いスワップポイントの得られるFX会社で買いのポジションを持ち、できるだけ売りで差し引かれるスワップポイントの値が小さいFX会社で同じ金額だけの売りポジションを持ちます。
上記の例では、買いのポジションのスワップポイントが高いC社と、売りポジションで差し引かれるスワップポイントが最も低いA社に注目して、C社で買いポジションを、A社で売りポジションを取ります。
両ポジションを1万通貨持つとすると、毎日スワップポイントが下記の金額分得られることとなります。
・C社(買)23円 ー A社(売)20円 = 3円
さらに、C社とA社とで逆のポジションで同じ通貨を持っているため、仮に為替変動で、C社の通貨ペアに含み損が出た場合でも、A社の通貨ペアでは利益が出て相殺できることになります。反対にC社側で含み益が出た場合は、A社側で含み損が出ているため、損益は相殺されます。
スワップポイントのサヤ取りのメリットは、両建てすることで理論上、為替変動によるリスクを回避しつつ、スワップポイントで利益が得られる点です。また、基本的には為替変動に振り回されることなく、スワップポイントの変動のみを1日1回程度チェックすればよい点も利点です。
このため、FXにまだ慣れていない初心者や、リスクを避けつつ銀行預金よりも少し高い利益を狙いたい方に向いています。デメリットは、両建てのために資金が通常の取引の2倍必要な点と、複数のFX会社の口座管理をしなければならない点、大きなリターンを得にくい点といえます。
1-3. FXのサヤ取りは違法ではない
FXのサヤ取りは違法な取引行為ではありません。ただし、一部FX会社ではサヤ取りを禁止している会社もあるためサヤ取りをする際には注意しましょう。
FXのサヤ取りを禁止している会社は主に海外FX会社です。国内FX会社でサヤ取りを禁止している会社はほぼありません。
海外FX会社がサヤ取りを禁止する理由は主に、海外FX会社が採用しているゼロカットシステムやボーナスが悪用される可能性があるためです。
ゼロカットシステムとは、為替相場の急激な変動でロスカットが間に合わなかった場合に、発生した損失をFX業者が補填する仕組みです。
口座に預けた資金以上に含み損が発生すると、口座残高はマイナスになりますが、ゼロカットシステムを採用する海外FX業者では、口座残高以上のマイナスはFX業者が負担してくれます。
同じFX会社内の複数口座や他のFX会社との間での両建てを認めてしまうと、このゼロカットが下記のように悪用される可能性があります。
【複数口座の両建てでのゼロカットの悪用例】
(例)「口座1」で買いポジションで10万円分保有、「口座2」で売りポジションで10万円分保有と両建てし、どちらかの口座の損失をゼロカットシステムに依存しようとするケース。
⇒この場合、仮に急激な値動きによって「口座1」がゼロカットされると、損失は10万円のみですみ、10万円以上の損失はFX会社が負担することとなります。一方の「口座2」には、逆のポジションで得た10万円以上の利益を確保することができます。このように、ゼロカットシステムがある場合、両建てで生じた片方の口座の残高以上の損失をFX会社に負わせることで効率的に稼ぐことが可能となります。
海外FX業者ではサヤ取りのためにゼロカットシステムを悪用されると自社の損失が大きくなるため、基本的に別口座や別会社との両建てを禁止しています。
なお、国内FX会社は、日本の法律でゼロカットシステムの採用が禁止されているため、ゼロカットシステムを取り入れていません。そのため、ゼロカットの悪用を恐れて複数のFX会社や複数口座での両建てを禁止することはないといえるでしょう。
一方、海外FX会社の場合は、レバレッジの制限がない代わりにゼロカットシステムを設けることが多く、ほとんどの海外FX会社がゼロカットシステムを設けています。
そのため、一部の会社を除きほとんどの会社で複数口座や他のFX会社との間での両建て、サヤ取りが禁止されています。
【参考:サヤ取りを禁止する海外FX会社とサヤ取りが可能な海外FX会社】
サヤ取りを禁止している海外FX会社の例(※1)
- XM Trading
- GEMFOREX
- IS6FX
- HotForex
- FXGT
- iFOREX
- HFM
サヤ取りが可能な海外FX会社の例
- AXIORY
- Tradeview
- Exness
- TitanFX(※2)
- ThreeTrader(※2)
※1 同じFX会社の複数口座あるいは複数のFX会社間での両建てを禁止する会社。あるいはアービトラージ禁止を明言している会社。
※2 同じFX会社の複数口座あるいは複数のFX会社間での両建てを禁止しないものの、ゼロカットを狙う両建ては禁止。あるいは、両建てにおいてはゼロカットシステムは機能しない。
サヤ取りは違法行為ではありませんが、サヤ取りを禁止している海外FX会社でサヤ取りの違反行為を行うと、不正に取得した利益の出金拒否、口座凍結などのペナルティが課される点にも注意しましょう。
2. 為替差益のサヤ取りの手順
FXのサヤ取りがどのようなものかという点について、お伝えしました。次に、具体的な手順や流れについて見てみましょう。
FXの2つあるサヤ取りのうち、以下では為替差益のサヤ取りについての手順を紹介します。
- 手順1:通貨ペアを選ぶ
- 手順2:選んだ通貨ペアのチャートの価格の離れ具合を確認
- 手順3:ポジションを持つ
- 手順4:決済(利確・損切)する
詳しくは次の通りです。
2-1. 相関関係にある通貨ペアを選ぶ
まず為替差益のサヤ取りをするための通貨ペアを選びます。
為替差益のサヤ取りを狙う場合には、似たような価格のトレンドを描く強い相関関係にある通貨ペアを選ぶ必要があります。
相関関係にある通貨ペアとしては、下記のようなものが挙げられます。実際に3年などの長期のチャートでトレンドや相関関係を確認して判断するようにしましょう。
【相関関係が高いといわれる通貨ペアの組み合わせ】
- 豪ドル/円とNZドル/円
- 米ドル/円とユーロ/円
- ユーロ/円と英ポンド/円
同じようなトレンドを描く相関関係にある通貨ペアを見つけるには、下記のようなインジケーターやツールを使うと便利です。
【相関関係を確認するのに便利なインジケーターやツール】
- TradeingView
TradingView社が開発したインストール不要で使えるオンラインチャート。無料版と有料版があり、無料版でも複数の通貨ペアのチャートを重ねて表示でき、相関関係を確認しやすい。 - Netsrac Correlation Dashboard Free
MT4(MetaTrader4)用の無料インジケーター。3つの通貨ペアの相関係数をテーブル表示できる。 - OverLayChart
MT4(MetaTrader4)用の無料インジケーター。2つの通貨ペアのチャートを重ねて表示でき、相関関係を確認しやすい。 - Multi Symbols in The Same Chart For MT5
MT5(MetaTrader5)用の無料インジケーター。2つの通貨ペアのチャートを重ねて表示でき、相関関係を確認しやすい。
2-2. 選んだ通貨ペアのチャートの価格の離れ具合を確認
選んだ通貨ペアの組み合わせのチャートを見て、離れ具合を確認し、エントリーをするかどうか判断します。
2つのチャートの価格差(サヤ)が大きく開いており、その差が閉じる傾向が見られるときのエントリーが望ましいといえます。
価格の高い方(割高の方)の通貨ペアを売りポジションで、価格の低い方(割安の方)の通貨ペアを買いポジションでエントリーすることになります。
2-3. ロット数を計算してポジションを持つ
通貨ペアの組み合わせのチャートを見てエントリーを決めたら、両建てするロット数を計算します。
売りポジション・買いポジションでそれぞれ含み損が生じた場合に相殺できるように、売りポジションと買いポジションの金額がほぼ同じになるようにするなどロット数のバランスをとることがおすすめです。
【ロット数の調整例】
豪ドル/円 95円(売レート)×17ロット(1万7000通貨)=1,615,000円
NZドル/円 85円(買レート)×19ロット(1万9000通貨)=1,615,000円
※極力、保有金額が同じになるようにロット数を調整
ロット数が計算できれば、そのロット数でエントリーし両建てでポジションを保有します。
2-4. 決済(利確・損切)する
2つの通貨ペアの差が縮まれば決済して、利確・損切します。
決済まで、相場に張り付く必要はないものの、急な価格変動で強制ロスカットになることがないように、一日一度は相場を確認しておくことがおすすめです。
なお、エントリー後、通貨ペアのトレンドが予想と反してさらに差が開くような動きをした場合などには、損失が倍になる危険性もあるため、早めの損切りをするようにしましょう。
3. スワップポイントのサヤ取りの手順
FXのサヤ取りのうち、スワップポイントのサヤ取りの手順について紹介します。
手順をまとめると下記の4つです。
- 手順1:通貨ペアを選ぶ
- 手順2:選んだ通貨ペアのチャートの価格の離れ具合を確認
- 手順3:ポジションを持つ
- 手順4:決済(利確・損切)する
詳しくは以下で解説します。
3-1. 通貨ペアを選ぶ
まずは、スワップポイントのサヤ取りに使う通貨ペアを選択しましょう。
スワップポイントのサヤ取りでは同じ通貨ペアを使う場合と、相関関係にある異なる通貨ペアを利用する場合とがあります。いずれの場合でも、スワップポイントのサヤ取りを行なう場合は、高金利通貨ペアを使う方が高いスワップポイントが得られます。
【高金利の通貨ペアの例】
- トルコリラ/円
- メキシコペソ/円
- 南アフリカランド/円
- NZドル/円
以下では、①同じ通貨ペアを選ぶ場合については「トルコリラ/円」で、②相関関係にある異なる通貨ペアを使う場合については「NZドル/円」「豪ドル/円」を例に解説します。
3-2. FX会社を選んで口座を開設する
利用する通貨ペアを決めたら、利用するFX会社を選びます。
各FX会社で、その通貨ペアの買いポジションと売りポジションで得られるスワップポイントの値を比較します。買いポジションで得られるスワップポイントと売りポジションで得られるスワップポイントの差が大きくなるようにFX会社を選ぶことが大切です。
①同じ通貨でサヤ取りをする場合
ここでは「トルコリラ/円」でサヤ取りをする場合を例に解説します。
「トルコリラ/円」の買いポジションのスワップポイントの高いFX会社と、売りポジションで差し引かれるスワップポイントの小さいFX会社を選び、差額を大きく確保するようにしましょう。
【トルコリラ/円のスワップポイントの例】
A社 | B社 | C社 | ||
---|---|---|---|---|
トルコリラ/円 | 買 | 20円 | 20円 | 23円 |
売 | -20円 | -35円 | -40円 |
※1万通貨当たり
上記例では、買いポジションではC社を、売りポジションではA社を選ぶことで、得られるスワップポイントの差額が比較的大きくなります。
【買いC社、売りA社で得られるスワップポイント】
・23円-20円 = 3円
※1万通貨当たり
利用するFX会社を決めたら、口座を開設します。
②相関関係にある異なる通貨でサヤ取りをする場合
ここでは「NZドル/円」「豪ドル/円」でサヤ取りをする場合を例に解説します。
まずは、各社のスワップポイントを確認しましょう。
【NZドル/円と豪ドル/円のスワップポイントの例】
A社 | B社 | C社 | ||
---|---|---|---|---|
NZドル/円 | 買 | 145円 | 130円 | 138円 |
売 | -165円 | -130円 | -141円 | |
豪ドル/円 | 買 | 130円 | 125円 | 115円 |
売 | -145円 | -130円 | -118円 |
NZドル/円と豪ドル/円は、逆のポジションで持ちます。
1日当たりに受け取るスワップポイントを大きく確保するためには次の選び方がおすすめです。
- NZドル/円を買い、豪ドル/円を売りで保有する場合は、NZドル/円の買いポジションのスワップポイントの大きいA社、豪ドル/円の売りポジションのスワップポイントの大きいC社を選ぶ
- NZドル/円を売り、豪ドル/円を買いで保有する場合は、NZドル/円の売りポジションのスワップポイントの大きいB社、豪ドル/円の買いポジションのスワップポイントの大きいA社を選ぶ
利用するFX会社を決めたら、口座を開設しましょう。
3-3. 選んだFX会社間で売り買いのポジションを持つ
FX会社を選んだ後は、それぞれの会社で通貨ペアの売り買いのポジションを持つようにしましょう。
①同じ通貨でサヤ取りをする場合
トルコリラ/円について、買いポジションのスワップポイントの高いC社で買いポジションを持ち、売りポジションのスワップポイントの大きなA社で売りポジションを持ちます。
買いポジションあるいは売りポジションで含み損が出た場合に、逆のポジションの損益で相殺できるように同額のポジションを持つとよいでしょう。
【トルコリラ/円でサヤ取りをする場合の投資金額の例】
・C社(買)1万通貨=60,000円
・A社(売)1万通貨=60,000円
・一日当たり得られるスワップポイント= 23円(C社買) - 20円(A社売) = 3円
※トルコリラ/円レート=6円と仮定、実際のスワップポイントは日々変動する。
②相関関係にある異なる通貨でサヤ取りをする場合
NZドル/円を買い、豪ドル/円を売るポジションでサヤ取りをする場合を例に解説します。
NZドル/円の買いポジションのスワップポイントの大きいA社、豪ドル/円の売りポジションのスワップポイントの大きいC社を選びます。それぞれのポジションで含み損が出た場合に相殺できるように同額のポジションを持つようにしましょう。
【NZドル/円を買い、豪ドル/円でサヤ取りをする場合の投資金額の例】
・NZドル/円 A社(買)1万9千通貨=1,615,000円
・豪ドル/円 C社(売)1万7千通貨=1,615,000円
・一日当たり得られるスワップポイント= 145円(NZドル/円A社買)×1.9 - 118円(豪ドル/円C社売)×1.7 = 74.9円
※NZドル/円レート=85円、豪ドル/円レート=95円 実際のスワップポイントは日々変動する。
3-4. 決済(利確・損切)する
スワップポイントは毎日多少変動するものの、ポジションを保有し続ける限り、毎日加算されます。
急な為替変動やスワップポイントの日々の変更に注意しながら、コツコツとスワップポイントを積み上げていきましょう。
スワップポイントの変更で一日に得られるスワップポイントの金額がマイナスになったり、両建てのポジションでも含み損が出る場合にはマイナスが大きくならないうちに決済することがおすすめです。
4. サヤ取りにおすすめの通貨ペア
サヤ取りに使う通貨ペアには、大きく分けて下記の2つの種類があるといえます。
- 為替差益でサヤ取りを行うには相関関係がある通貨ペア
- スワップポイントでサヤ取りを行うにはスワップポイントが大きい通貨ペア
それぞれについてのおすすめの通貨ペアを下記で紹介します。
4-1. 【おすすめ】相関関係にある通貨ペアの組み合わせ
為替差益でサヤ取りをする場合には、相関関係がある通貨ペアで行う必要があります。
相関関係があるおすすめの通貨ペアの組み合わせは以下の通りです。なお、相関係数は1に近いほど相関関係が強いことを示します。
【おすすめ】相関関係がある通貨ペアの組み合わせ | |
---|---|
通貨ペアの組み合わせ | 相関係数(※) |
豪ドル/円とNZドル/円 | 0.8239 |
米ドル/円と香港ドル/円 | 0.9981 |
米ドル/円とSフラン/円 | 0.9888 |
ユーロ/円と英ポンド/円 | 0.9871 |
米ドル/円と英ポンド/円 | 0.6958 |
米ドル/円とユーロ/円 | 0.6690 |
出典:大起証券株式会社「組み合わせ別 FX相関係数ランキング」
※2023年9月25日時点での260日間の算出データ。
相関関係があるといわれる通貨ペアの代表的な組み合わせは、「豪ドル/円とNZドル/円」です。
そのほかにも相関関係になるメジャーな通貨ペアの組み合わせとしては、「ユーロ/円と英ポンド/円」や、「米ドル/円と英ポンド/円」などがよく挙げられます。
4-2. スワップポイントが高めの通貨ペア4つ
スワップポイントでサヤ取りをする場合には、スワップポイントが高い通貨ペアを選ぶとそれだけ高いスワップポイントを狙うことができておすすめです。
スワップポイントは金利差が大きい通貨ペアであるほど大きいため、下記の高金利の通貨ペアがおすすめです。
- トルコリラ/円
- メキシコペソ/円
- 南アフリカランド/円
- 米ドル/円
上記のうち「トルコリラ/円」「メキシコペソ/円」「南アフリカランド/円」は、新興国との通貨ペアであるため、価格変動が激しいというデメリットもあります。そのため、価格変動が比較的安定していて売り買いもしやすい「米ドル/円」もおすすめです。
【おすすめの通貨ペアのスワップポイント例】
みんなのFX | SBI FXトレード | AXIORY | ||
---|---|---|---|---|
トルコリラ/円 | 買 | 20.0円 | 20円 | 54.76円 |
売 | -20.0円 | -35円 | -69.98円 | |
メキシコペソ/円 | 買 | 25.1円 | 25円 | - |
売 | -25.1円 | -28円 | - | |
南アフリカランド/円 | 買 | 17.1円 | 16円 | 6.74円 |
売 | -17.1円 | -19円 | -14.71円 | |
米ドル/円 | 買 | 235.0円 | 236円 | 98.15円 |
売 | -245.0円 | -243円 | -276.7円 |
※1万通貨当たり。2023年9月時点
5. サヤ取りにおすすめのFX会社
サヤ取りをする場合には、どのFX会社でやるべきか迷うこともありますよね。
そこで、以下ではFXのサヤ取りをする場合のおすすめのFX会社について紹介します。
サヤ取りにおすすめのFX会社とその特徴をまとめると以下の通りです。
サヤ取りにおすすめのFX会社 | |
---|---|
海外FX会社5社 | |
AXIORY | 業界最狭水準の低スプレッド。複数口座・複数FX会社との両建てOK。ゼロカットシステムあり。信託保全は全額補償のため信頼度も高い。 |
Tradeview | スプレッドの狭さが業界最高水準。複数口座・複数FX会社との両建てOK。ゼロカットシステムあり。高度で多様な取引ツールを提供。上限3.5万ドルの信託保全で信頼度も高め。 |
Exness | 取り扱い通貨ペアが約100種と業界トップクラス。複数口座・複数FX会社との両建てOK。ゼロカットシステムあり。レバレッジの高さが業界最高水準。 |
TitanFX | 取引コストの低さと約定力の高さが業界最高水準。複数口座・複数FX会社との両建ては基本OKだが、ゼロカット狙いの両建ては禁止。信託保全はないが出金拒否の噂はない。 |
ThreeTrader | スプレッドの狭さが業界最高水準。複数口座・複数FX会社との両建ては基本OKだが、ゼロカット狙いの両建てや、両建てを禁止するFX会社との両建ては禁止。日本語サポートが充実。 |
国内FX会社4社 | |
GMOクリック証券 | スプレッドが業界最狭水準。同社の「プラチナチャート」では、一つの画面で通貨ペアなどの値動きの相関関係を一目で確認できる。通貨ペアの値動きを重ねて表示・比較することも可能。 |
みんなのFX | 主要通貨ペアのスプレッドが業界最狭水準。スワップポイントが高水準。通貨ペアを重ねて表示できる「TradingView」の有料機能が使える。 |
LIGHT FX | スプレッドが業界最狭水準。スワップポイントが業界最高水準。通貨ペアを重ねて表示できる「TradingView」の有料機能が使える。 |
DMM FX | スプレッドが業界最狭水準。パソコン・スマホの取引ツールが充実。「DMMFX PLUS」で通貨ペアを重ねて表示することや通貨ペア同士の相関関係を確認する「相関分析」も可能。 |
海外FX会社は、サヤ取りを禁止している会社が多いとお伝えしましたが、禁止していない会社もあります。上記でおすすめした海外FX5社は、サヤ取りを禁止しておらず複数口座・複数FX会社での両建てが可能な会社です。
海外FX会社は、国内FX会社と異なりレバレッジを大きく効かせられるなど少額で投資を始めてみたい人の利用にも向いているため、FX初心者の方にもおすすめです。レバレッジのリスクが心配な場合でも、ゼロカットシステムがあるため、口座残高以上の損をする心配がありません。
また、海外FXは取り扱い通貨ペア・商品も多く、MT4・MT5というハイスペックなFX専用ツールが基本的に利用できるため、今後本格的にFXに取り組みたい方の利用にも向いています。
サヤ取りにおいても、MT4やMT5のインジケーターを利用して高度な分析や取引を行うことが可能です。
一方、国内FX会社については、基本的にどの会社でもサヤ取りを行えます。選択肢が多いため、かえってどの会社を選べばいいか迷ってしまうこともあるかもしれません。
上記でおすすめした国内FX4社は、スプレッドが特に狭く、サヤ取りの対象となる通貨ペアを比較・検討できるチャート機能が使える会社です。
スプレッドが狭いため手数料が抑えられるほか、基本の取引ツールで、2つの通貨ペアを重ねて表示できたり、相関関係を確認できたりするなど、効率的にサヤ取りの対象の通貨ペアを探すことが可能です。サヤ取りをするのに使い勝手のいいFX会社といえるでしょう。
6. サヤ取りで失敗しないための注意点
サヤ取りを行う際には、失敗しないためにも注意したい点があります。
注意点は下記の6点です。
- 期待できる利益は基本的に小さい
- 両建ての費用がかかるためある程度の資金が必要
- 両建てでも損が出ることはある
- 強制ロスカットに注意する
- サヤ取りは違法ではない
- サヤ取りを禁止するFX会社もある
具体的な内容を以下で紹介します。
6-1. 期待できる利益は基本的に小さい
FXのサヤ取りに期待できる利益は基本的に小さい点に注意しましょう。
FXのサヤ取りは、両建てにより含み損を相殺して大きなリスクを防げる一方で、大きな利益を得にくい手法です。
例えば「3-3. 選んだFX会社間で売り買いのポジションを持つ」で紹介した例のように両建てで合計12万円の投資をしても一日に得られるスワップポイントのサヤは3円とごく少額のケースもあります。
リスクが低い反面、稼ぎにくいというデメリットに注意が必要です。
6-2. 両建ての費用がかかるためある程度の資金が必要
FXのサヤ取りは基本的に両建ての投資方法のため、投資資金は通常の2倍程度必要といえるでしょう。
また、サヤ取りは通常ローリターンのため、多くの利益を得るためには多くの資金を投資しなければなりません。
両建てのため必ずどちらかのポジションで含み損が発生するため、強制ロスカットをされないように証拠金を十分に用意する必要があるなど、サヤ取りはそれなりに資金がかかる投資方法といえます。
6-3. 両建てでも損が出ることはある
両建ては、同じ通貨を売り買い両ポジションで同じ分だけ持つため、値上がりや値下がりでどちらかで損をしてもどちらかで利益を得られるなど、理論上は損が出ない方法です。
しかし、実際には両建てでも損が出ることはよくあります。
両建てでも損が出る理由の一つは、売りと買いの両方に取引コストがかかるためです。
売り買いの両方に手数料であるスプレッドがかかり、さらに売り買いのポジションを保有し続ける限り、売り・買いのスワップポイントの差額が保有コストとして発生します。
また、相場が急変した際に、評価損が増えて売りと買いのポジションのどちらかが強制ロスカットにあって損失が確定しまうこともあります。
両建てでも、手数料やロスカットのため損が発生することが多い点に注意しましょう。
6-4. 強制ロスカットに注意する
先でも少し触れましたが、サヤ取りの場合は強制ロスカットに注意する必要があります。
両建てで保有している通貨において急激な相場変動などがあった場合、どちらかのポジションで大きな評価損を抱えて強制ロスカットとなるケースも少なくありません。強制ロスカットになると大きな損失が確定してしまいます。
一般的に、証拠金維持率の目安は取引額の3倍以上といわれるため、強制ロスカットを避けるためにも証拠金は3倍以上に維持するなど、注意を払うようにしましょう。
6-5. サヤ取りは違法ではない
「サヤ取りは違法では?」と不安に思う方もいるかもしれませんが、サヤ取りは違法ではありません。
海外FX会社でサヤ取りを実質禁止している会社が多いため、サヤ取りを禁止・違法行為と思ってしまいがちですが、国内FX会社では特に禁止はされてはいません。実際のところ、サヤ取りは、FX投資や株式投資で、広く利用されている手法です。
海外FXでサヤ取りを禁止しているのは、次の項でも紹介しますが、海外FX会社の損失につながるためです。海外FXでは禁止事項となっているためサヤ取りを行うと口座凍結などのペナルティを受けることもありますが、国内FX会社では特に問題なく活用できます。
6-6. サヤ取りを禁止するFX会社もある
先にも解説した通り、サヤ取りは違法でないもののサヤ取りを禁止するFX会社もあります。
特に海外FX会社ではほとんどの場合、「別口座を使っての両建て」「他のFX会社との間での両建て・アービトラージ」「ボーナスを利用してのアービトラージ」を禁止しています。
海外FX会社でアービトラージを禁止するのは、両建てアービトラージやボーナスアービトラージは海外FX会社の損失になるといった理由からです。
これらの禁止事項に違反した場合には、不正に取得した利益の出金拒否、口座凍結などのペナルティを受ける可能性があるため、注意しましょう。
まとめ
FXのサヤ取りについて解説しました。
FXのサヤ取りとは、同じ特性を持つ2つの商品間で、割安な方を買い割高な投資対象を売って差益を得ることです。
裁定取引(アービトラージ)ともいい、FXでのサヤ取りの方法は大きく分けて「為替差益におけるサヤ取り」と「スワップポイントにおけるサヤ取り」の2つがあります。
それぞれの特徴は以下の通りです。
【為替差益におけるサヤ取りとは】
相関関係にある2つの通貨ペアについて、売りと買いの逆のポジションを持つことにより、為替変動のリスクを避けながら、価格差から発生する差益を狙う取引方法のことです。
メリットは理論上、大きなマイナスを避けられるというローリスクの手法であることで、デメリットは、実際に利益を上げることは比較的難しいといわれたり、両建てのため必要資金が通常の取引の2倍かかったりすることです。ローリスクでFXを初めてみたい方におすすめの手法といえます。
【スワップポイントにおけるサヤ取りとは】
同じ通貨ペアあるいは相関性の高い通貨ペアについて、2つのFX会社で売り買いの逆ポジションを持つことで、為替変動のリスクを避けてスワップポイントを受け取る方法のことです。
メリットは、両建てすることで理論上、為替変動によるリスクを回避しつつ、スワップポイントで利益が得られることです。デメリットは、両建てのために資金が通常の取引の2倍必要な点と、複数のFX会社の口座管理をしなければならない点、大きなリターンを得にくい点といえます。
FXにまだ慣れていない初心者や、リスクを避けつつ銀行預金よりも少し高い利益を狙いたい方におすすめといえるでしょう。
FXのサヤ取りはローリスクローリターンの方法ですが、活用する場合は、スワップポイントの日々の変動や、含み損で強制ロスカットにあわないように注意しましょう。
これらの情報が、FXのサヤ取りで上手に利益を上げるために役立つと幸いです。